任天堂のマーケティング戦略とは?あなたもマネできるマーケティング戦略を一挙解説!

世界のゲーム業界をけん引する任天堂。
大人気ゲームを数々開発し、今では「Wii」をはじめとした家族みんなに愛されるゲームまで開発しています。
今回はそんな任天堂が「なぜここまで成長できたのか?」について、その秘密をマーケティング戦略の観点から紐解いてきます!

任天堂のマーケティングは「新しいセグメントへの価値提供」がポイント
任天堂のマーケティング戦略のなかで、最も興味深く面白かったのが「新しいセグメントへの価値提供」を常に意識しているという点です。
ここでは主に、
- 顧客にならない層(非顧客)へあえてアプローチ
- 既存顧客が新規顧客を集客
という2つのポイントについて、具体的な例をもとにお話します。
ゲームは子供向け?あえて「ファミリー」をWiiで狙った!
まずご紹介するのは、「ゲームは子供向けである」というイメージを払拭し、家族全体で利用できるゲームを開発した事例です。
任天堂のゲームの代表作に「Wii」があります。
2006年に任天堂が開発したゲームで、現在は生産を中止してしまっているものの、爆発的な人気のあったゲームでした。
このWiiが爆発的な人気を誇った理由が「ファミリー層に広く受け入れられたから」なのです。古くはファミコン、2000年代からはDSと、任天堂が開発するゲームは基本的に「子供」をターゲットとしたものばかりでした。
しかし、Wiiを開発し、複数人がリモコンで思い切り楽しめるというメリットを訴求したのです。これによって、子どもだけでなくファミリーまでを巻き込んだ「家庭向けゲーム」としての立ち位置を確立しました。
この任天堂の施策は「顧客だけでなく非顧客にも注目する」という手法を活用しています。

マーケティングは基本的に、自社の価値を提供できそうな「ターゲット」に向けた施策を立案しがちです。
しかし既存顧客を見ているだけでは、施策のアイデアも規模も変わりませんし、競合とのパイの取り合いをし続けることになります。
よって、「自社の顧客にならない層はどんな特性があるのか」に注目して施策を打っていけるとよいでしょう。
任天堂はコミュニティを使ったマーケティングが得意
任天堂のマーケティング戦略で特筆すべきは、「コミュニティを使ったマーケティング戦略のうまさ」にあります。
例えば、下記のような「スーパーマリオメーカー」などが良い例です。
このスーパーマリオメーカーは、コースをを自由に作れて、世界中にシェアできるといったコミュニティです。
世界中の人が作ったコースで遊べて対戦もでき、協力プレイもできたりします。
このシステムは、ユーザーとユーザーがつながることで新たな面白さを生んでいる状態です。これが任天堂のコミュニティの価値なのです。
その他にも、スーパーマリオメーカーの大会を開催していたり、攻略方法やコース作成をシェアできるコミュニティも生まれています。
コミュニティが生まれ、ユーザー間で交流が生まれるからこそ
- ユーザーがおすすめして新規顧客が集まる
- なかなか任天堂のゲームから離反されにくい
という状況を作り出しているのです。
おすそ分けプレイやNintendo Switch Onlineで既存顧客の幅広い二ーズに応え、離反を防ぐ仕組み
次にご紹介するのがおすそ分けプレイやNintendo Switch Online によって既存顧客の幅広いニーズに応え、離反を防ぐ仕組みを作った事例です。
おすそ分けプレイというのは、本体を持っていなくても家族や友達と一緒に遊ぶことができる機能の事です。
この機能によって、カップルが暇つぶしに、ゲームを持っていない子が遊びに来た時、などの様々なシーンでの利用が可能になります。
また、Nintendo Switch Onlineは、Nintendo Switchソフトのオンラインプレイや、懐かしのファミコンなどの多種多様なゲームで遊べたり、セーブデータを預かってもらうなどの豊富な機能が利用できます。
これらの機能は、
- 自分だけでなく、他者と共有しつつプレイしたい
- もっといろんな種類のゲームで遊んでみたい
といった、従来の「一人でプレイするゲーム」という観点を180度変えたアプローチだといえるでしょう。
ゲームをもっと大人数でやりたい、一人ではなく多くの人とマッチして楽しみたい、という既存顧客のニーズに応えることで任天堂ブランドからの離反の防止を狙っています。
豊富なキャラクターによるIP戦略
任天堂の強みの一つが、マリオやゼルダ、ポケモンといった強力なIPの存在です。

これらのキャラクターは、単なるゲームの主人公としてだけでなく、幅広いビジネス展開を可能にする重要な資産となっています。
たとえば、ユニバーサル・スタジオとのパートナーシップによる「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の展開は、ゲームの世界観を現実空間で体験できる革新的な取り組みです。
また、2023年公開の「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、ゲームIPの新たな可能性を示す成功例となりました。
さらに、ファッションブランドとのコラボレーションや、文具・雑貨などの商品展開により、日常生活のさまざまなシーンで任天堂のキャラクターに触れる機会を創出しています。
これらの取り組みは、ブランドの認知度向上とファン層の拡大に大きく貢献しています。

体験を起点としたマーケティング施策
任天堂のマーケティング戦略において、「体験」は極めて重要な位置を占めています。
同社は、製品の魅力を言葉で説明するのではなく、実際のプレイ体験を通じて顧客の心を掴む手法を重視しています。
例えば、新作ゲームのリリース前には、必ずと言っていいほど体験版を配信しています。

「スプラトゥーン3」や「ピクミン4」などの新作タイトルでは、製品版の一部を無料で体験できる「体験版」を提供し、プレイヤーが実際にゲームの面白さを体感できる機会を設けています。
ゲームという領域は、セールスコピーやマーケティング手法には限界があり、結局は「実際に遊んでみて面白かったかどうか」が購入の決め手になります。
従来であれば、「購入してから体験できる」ことが一般的でしたが、近年では「体験をして、価値を理解したから購入する」という顧客行動に変化しています。
その他にも、全国の大型商業施設やゲームショップでは、定期的に体験会イベントを開催しています。
これらのイベントでは、発売前の新作タイトルを試遊できるだけでなく、任天堂のスタッフが直接プレイヤーの反応を観察し、製品改善のためのフィードバックを得る貴重な機会としても活用されています。
代表的なのは。Nintendo Switchの発売前に実施された「Nintendo Switch 体験会 2017」です。
全国各地で開催されたこのイベントでは、Joy-Conの特徴的な操作性やHD振動の新体験を、実際に多くの消費者に体験してもらうことで、製品への期待感を高めることに成功しました。
近年の顧客行動は「RsEsPsモデル」で構築されている

任天堂は「購入前の体験」を非常に重視します。
これは、近年のユーザーの購買行動はRsEsPsモデルで構築されているからです。
ユーザーは商品を認識した瞬間、検索・共有、そして拡散を行います。
その後、実際にトライアルで体験を行い、ここでも検索、共有、そして拡散を行っているのです。
これらのプロセスを経て、最終的に納得のいく購入理由を自身の中に醸成できれば購入に至ります。
この顧客行動の特徴的な点は、購買の前に体験が存在しているという点です。
通常、購買することでサービスの価値を享受でき、体験に至ります。しかし今回のフレームワークの場合、先に体験が機能することで購買が進みます。
これは近年のユーザーが不透明性のブラックボックスを嫌い、「中身が分からないモノ」は検討の土台にも乗らないことを示しているでしょう。
一定期間無料で利用できるサブスクや登録してから数か月無料で使えるアプリなど、無料で体験したのちに購入判断ができるサービスが増えているのは、「体験してもらわなければ検討を進めてもらえない」という理由があるからなのです。
まずは体験を中心に、顧客の購買を誘発できるとよいでしょう。
任天堂のマーケティングトレース
ここからは任天堂のマーケティングトレースを実施していきます。
主に
- PEST分析
- 競合分析
- マーケティングミックス
の3つの観点で分析を進めていきます。
任天堂のPEST分析
PEST分析とは、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から外部環境を分析するフレームワークです。

政治(Political)の観点では、eスポーツ振興や知的財産保護の強化といった規制緩和が、任天堂にとって追い風となっています。
一方で、国ごとに異なるゲーム規制への対応や、米中貿易摩擦による影響には注意が必要です。
経済(Economic)面では、世界的なゲーム市場の成長が継続しており、特にサブスクリプションモデルの普及は、Nintendo Switch Onlineのような定額制サービスの収益基盤を強化しています。
ただし、為替リスクや景気後退による消費者の購買力低下には留意が必要です。
社会(Social)環境においては、ゲームの社会的受容度の向上が顕著です。
教育やフィットネスなど、従来のエンターテインメントの枠を超えた活用が進んでおり、「Ring Fit Adventure」などの商品展開を後押ししています。
しかし、ゲーム依存症への懸念や、日本市場における少子化の影響は無視できない課題となっています。
技術(Technological)面では、任天堂独自の革新的なハードウェア開発力が強みとなっています。
一方で、クラウドゲーミングやVR/AR技術の台頭により、従来のゲーム機ビジネスモデルの変革を迫られる可能性も出てきています。
任天堂の業界競合と価値競合
任天堂の競合環境は、大きく「業界競合」と「価値競合」に分類できます。
業界競合としては、その名の通りゲーム業界における競合を示しており、価値競合とは、任天堂の「価値」を中心とした競合を示しています。

まず、任天堂の業界競合としては、
- Sony(PlayStation)
- Microsoft(Xbox)
が挙げられます。
これらの企業は、高性能なハードウェアとオンラインサービスを武器に、コアゲーマー層を中心とした市場でしのぎを削っています。
また、近年では中国のTencentや、GoogleのStadiaなど、新興プレイヤーの台頭も注目されます。
特にモバイルゲーム市場やクラウドゲーミング分野では、従来のゲーム機メーカーとは異なるビジネスモデルで市場に参入してきています。
一方、価値競合の観点では、
- Disney
- LEGO
など、エンターテインメント体験を提供する企業が挙げられます。
特にDisneyは、強力なIPを活用したコンテンツ展開やテーマパーク事業など、任天堂と類似した戦略を展開しています。
任天堂のマーケティングミックス
任天堂のマーケティングミックスは、4Pの観点から非常にバランスの取れた戦略を展開しています。

製品(Product)戦略では、
- Nintendo Switchに代表される革新的なハードウェア
- マリオやゼルダといった強力なキャラクターのIP
を組み合わせることで、独自の価値提供を実現しています。
価格(Price)戦略では、競合他社と比較して手頃な価格帯を維持しつつ、ソフトウェアの価値を重視した設定を行っています。
さらに任天堂は、価格改定戦略を取っており、新しいゲーム機発売後、約1年で価格改定や廉価版の発売を行う傾向があります。
これは、価格を下げて顧客層を広げる狙いや、それによる競争力の維持、製品の寿命を延ばし、製品ライフサイクルを高める狙いがある等様々な目的があります。
流通(Place)戦略においては、実店舗とデジタル販売の両チャネルを効果的に活用しています。
任天堂eショップを通じたデジタルダウンロード販売の強化により、消費者の購買利便性を高めています。
また、ユニバーサルスタジオとの提携による「スーパーニンテンドーワールド」は、ブランド体験の場としても機能しています。
プロモーション(Promotion)戦略では、Nintendo Directを通じた直接的な情報発信や、SNSを活用したデジタルマーケティングを展開しています。
また、体験会やイベントを通じた直接的なコミュニケーション、他ブランドとのコラボレーションなど、多角的なアプローチで消費者との接点を創出しています。
任天堂のマーケティング戦略をあなたの業務に活かすには?
任天堂のマーケティング戦略から、私たちマーケターが学べることはたくさんあります。
今回学べたこと、そしてこれから行かせることを下記にまとめました。
ぜひともご活用ください。
マーケターのための実践的思考法とスキル
| 戦略カテゴリー | 主要ポイント | 任天堂の具体例 |
|---|---|---|
| 1. 非顧客への価値提供 |
・既存市場外のセグメント分析 ・新規市場の開拓 ・従来にない価値提供 |
Wiiによる非ゲーマー家族層の開拓 |
| 2. コミュニティマーケティング |
・ユーザー間交流の促進 ・コンテンツ共有プラットフォーム ・自発的な情報発信 |
スーパーマリオメーカーのコース共有システム |
| 3. 体験起点のマーケティング |
・RsEsPsモデルの活用 ・購入前体験の重視 ・顧客フィードバックの活用 |
・新作ゲームの体験版配信 ・全国での体験会開催 |
| 4. IP活用戦略 |
・知的財産の多角的展開 ・クロスメディア展開 ・ブランド価値の最大化 |
・スーパーニンテンドーワールド ・マリオ映画 ・商品化ライセンス |
| 5. 戦略的価格設定 |
・ライフサイクルに応じた価格改定 ・顧客層拡大戦略 ・競争力維持 |
・本体価格の段階的な改定 ・廉価版の投入 |
| 6. 環境分析フレームワーク |
・PEST分析 ・競合分析(業界/価値) ・4Pフレームワーク |
・eスポーツ市場への対応 ・ディズニー等との価値競合分析 |
| 7. 顧客ニーズ対応 |
・サービス機能の拡張 ・利用シーンの創出 ・継続的な価値提供 |
・Nintendo Switch Online ・おすそ分けプレイ機能 |


コンテンツマーケティングおたく。SEOとソーシャルメディアを活用したマーケティングが得意。大学在学中から店舗向けのSNSマーケティングサービスを提供。その後、都内のマーケティング会社にてSNSコンサルタントを経験。その後、SEOツールのセールスとして活動し、現在はメディア運営を主業務としたコンテンツマーケターとして活動中。


